2009年6月10日水曜日

入門実習日誌(小豆島)その4

バスに乗り遅れ、歩き回りたくなる
次のバスは17時09分。
坂手港には17:30分頃着になる。
微妙に中途半端だ。
ここで時間を過ごすにも、今いる場所は公園の他は特に何もない。
バス停とバス時刻のややこしさと、この失敗はおもしろいけど、今日はみんなのエピソード優先の日にして、黙っていよう。
日誌で報告することに決めた。

このへんで、誰かと話し込んで簡易インタビューしようかと思ったが、町立図書館の場所などの状況を確認したかったし、こうなったら町歩きしたいなぁと思って、使いたくないけどタクシーを探すことにする。
オリーブ・ギャラリーから出てきた50代くらいの男性に話かける。
オリーブの話を聞けたらと思ったが、スラックスにワイシャツの男性は、あまりそのような関係者に見えない。
催事場の手伝いに来ているだけだという。
そこで話を続けようとしたところで、ちょうど向こうから空きタクシーがやってきた。

すぐにタクシーの方へ乗り込むと、タクシー運転手の60代くらいの男性は、船舶関連に詳しい人だった。
聞けば、息子さんは海上保安庁に航海士として勤めているという。
しかし、この話を聞いてどう受け取ったらいいのか少しとまどった。
たとえば和歌山の那智勝浦に行ったときに、旦那さんや先代の方は鯨漁師であったというエピソードが出てくると、それ自体、地域ではかなり名誉なバリューを持つ事柄なのだが、今聞いた話は小豆島ではよくあるエピソードなのか、社会的価値が高いものなのだろうか。
運転手さんの話ぶりは、かすかに誇らしげに聞こえたのだが。
しかし、このことを確認する前にいろいろと目の前に見えるものについてたずねてしまった。
行きのバスの車窓越しに見た港湾内に浮かぶ大型船は、まだ同じところに停泊している。
あれは国土交通省管轄の船で大型船舶操舵の2級海技士を教育するための1000トン級の○○(聞き取れず)丸という訓練船である。
3・4日小豆島を停泊所として早朝から動きはじめて晩まで何やら訓練らしきことをしている。
夜になると、大型船の灯りが美しく海に映えるらしい。
小豆島の内海湾には、一年に数回、こうした訓練船が訪れる。
小豆島に特に学校があるわけでなく、実習地となっているのだが。
内海に停泊中は、1日だけ休暇のように乗員が陸に上がってくる。
この前も若い乗員たちが集団で寒霞渓へ登っていった。
ただし、これもどうやら訓練の一環らしく、みんなでぞろぞろ登山していたそうだ(「運動上陸」という)。
そうした様子は昔から見ていたが、近年の特色は、女性の訓練生が増えてきたことだ。
こうして教育訓練船はやがてハワイ沖まで実習の足を伸ばすのだそうだ。
と、ここまで聞いていたら、内海の役場の前を過ぎ、図書館についた。


「町立図書館」
図書館の入り口には、「町立図書館」とだけ看板があった。
小豆島町HPに紹介されている町立図書館というのは、「小豆島町池田(旧池田町)」にある「小豆島町立図書館」だけである。
目の前にある「町立図書館」は小豆島町のHPには掲載されていない。
小豆島町役場は旧池田町の中心にある。

図書館の向かい側には道路をはさんで古い神社跡と広い空き地があり、空き地の向こうには古い木造立て小学校のような建物がある。。
醤油直売所と看板があったので、近づく。
高橋醤油というその工場は、文化庁指定の登録有形文化財になっている。
直売所と書いてあるけど、ガラスケースに製造製品が飾られているだけで、事務室らしい場所の他に売店があるように見えない。
事務室のドアの前でボウーっとしていると、白い帽子に白い作業着の女性が2・3人、あわただしくドアから小走りで出たり入ったりしはじめ、声をかけそびれる。
すぐそばに見える八幡神社の大きな鳥居を写真におさめる。
高橋醤油のそばにある玉姫神社と、その境内にある高橋醤油創業者の高橋実造さんの銅像も写真に撮る。


広場にあるジャングルジムで子どもたちを遊ばせている30代くらいに見える黄色Tシャツの男性が、何度もチラチラこちらをうかがっている。
町立図書館に入る。
こじんまりとした2階立ての図書館で、図書とAVスペースが1階に多目的スペースが2階になっている。
子どもたちがにぎやかに出入りしていて、小さな子どもを連れたお母さんらしき女性が3・4人図書の付近に見える。
60代から70代くらいに見える男性が新聞を読んだり、小説を読んだり、居眠りしていたりしている。
40代から50代に見える男性が一台しかないPCでインターネットを見ている。

お目当ての郷土資料コーナーは1階奥の階段の脇のスペースにあった。
そこだけ電気が消えている。
コの字型のそのコーナは、どんつきが郷土に関する文学資料で、両脇は、香川県コーナーと小豆島コーナーになっている。
コの字の真ん中にはまたひとつガラス戸のついた本棚があって、壷井栄の原稿や初版本が表紙が見えるように陳列されている。
香川県コーナーには、地誌や県の統計情報や各種一般出版社からの書籍の大型本が並んでいる。
印象深いのは、小豆島コーナーの図書の並びが乱雑なことである。
特に、小説など動きの少ない本のとなりにある、ファイリングした報告書や、民俗書籍のコピーや大型本があちこちに飛び出して並んでいる。
記念に写真に撮りたいくらい乱雑さが不思議な光景。
島の郷土資料として小豆島郡や小豆島町の郡誌や町史という書籍はない。
小豆島内のそれぞれの町単位で、たとえば方言とか食べ物とか祭り・民俗に関する報告書はちょっとずつあるが、まとまった形の図書や、すべての町を揃えてある感じはない。
統計資料も開発にかかわる計画案が目立つがそのほかはあまり多くはない。
醤油の歴史、オリーブの歴史も2・3目につくだけ。
醤油記念館を記念した出版物はある。
多いのは、小説・歌などの文学関連の書物。
「るるぶ」など観光案内出版物もそれなりにある。
観光案内の情報誌はむしろ図書館ではあまり見ないようにも思う(”民業を圧迫することになる”からという話を別の自治体で聞いたことがある)。
なぜか小豆島コーナーには文学作品と並んで浜田寿美男さんの心理関係の研究書が何冊もある。
浜田さんは小豆島の出身なのだろうか。
「自白の研究」は無かったけど。
浜田さんの研究では、「自白の研究」という大著があまり心理心理してなくて面白くて・・・・・・無駄なノーツはここでやめる。
住宅地図を見たかったが、僕よりも先に50代くらいの男性が図書館員に探してもらって見入っていた。
チェックの襟付きの半袖シャツにコットンのパンツ、白髪の男性の話すことばは関東の方の言葉に聞こえたが、ゼンリンの住宅地図で、どうやら小豆島の霊場を全てチェックしているようだった。
時間がかかりそうで、時刻も17時前になろうとするので、地図は諦めて図書館を出る。
ちなみに図書館は、午前10時から午後6時まで。
明日、日曜も同じ時間で開館している。

エリエス荘までは、もちろんいい時間帯のバスは無いので、歩くことにする。


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