2014年9月5日金曜日

(映)2013はBLANCA NIEVES(ブランカ ニエベス)





「ブランカ ニエベス」って何だ?

どこかで聞いたことあるような…

全然意味がわからないのに、お金払って入ってしまった。

以前、ちらっと見た予告映像は、モノトーンの映画で若い女性が闘牛士をしていることだけ記憶に残った。

映像が、”なんかキている”感じがした。
「ハンナ・アーレント」を見に行ったのだが、後回しにすることにした。


ミニシアター行ったのは、数年ぶりだ。
最近は、家族連れの喧騒に沸き返るシネコンばっかり。
久しぶりに来てみると「ここは美術館か!」と思う。

タッチ画面のチケット販売マシンなんかない。
カウンターのみの窓口は手作り感があっていいのはいい。
だが、なんか「映画って芸術です」的なハイソ感が鼻につくような気もする。

初老のご夫妻や、小奇麗なご婦人方ばかりという客層。
小さな狭いロビーは、余計な音が一切ない。
せいぜい窓口のチケット購入時に出てくる軽口ぐらいだ。

この映画の前にみた映画は、あの「新世界国際映画館」での「ビザンチウム」。
上映中の頻繁な出入りの音と光、咳・独り言・鼻歌、前席にもたれかけた両足、座席で広げられるスポーツ新聞、4・5人でいっぱいになる小さな待合は煙草の煙で充満…となんとも賑やかな様子だった。

久しぶりのミニ・シアターは、静かで洒落ている。
ホール内は、さらに静かであった。
音が壁に吸い込まれるような気がする。

上映開始で部屋が暗くなった一瞬、
この部屋には他に誰もいないんじゃないかと思えるくらい静かになった。

真っ暗

誰かがゆったりした座席の上で腰の位置を変えた音が大きく聞こえた。


暗さのおかげだと思う。映画本編にはものすごく集中できた。

映画はモノトーン&サイレント。
そんなことも知らずに座席に座っていた。
音声は無いけど、美しいBGMがずっと流れ続けている。

特に印象に残ったのがスパニッシュギターや、カスタネットのリズム。
映画を見ている間、ギターを叩いたり、カスタネットをはじく演奏者の手の動きのイメージがずうっと頭の中に浮かんでいた。

一方、画面の美しさに文字通り目が眩んでもいた。
モノトーンの映像が、こんなにも美しいものとは。
ひとつひとつのカットが美しく、美術絵画を眺めているように感じた。
しかもその絵が動く。

「絵が動いている」
独り言を声に出して言いそうになった。

映画って”活動写真なんだ”と、この年になってはじめて気が付いた。


BLANCA NIEVES とは白雪姫のことだった。

この映画はスペイン的な文化と情熱で彩られた snow white の物語なのだった。

魔女も7人の小人もちゃんと出てくる。

白雪姫に模した現代の寓話のような物語、というよりも

寓話の形を模した現実の厭らしさを語る結末とでもいうべきでしょうか。

2014年9月3日水曜日

(映)「イーダ」

●ポーランドのユダヤ人をとりまくお話。

歴史的状況、その空気感についてセンスがないと、特に主人公の叔母ヴァンダの抱えるものについて推し量ることもできない…という印象を受けました。

ドイツ・ナチス党の支配下、隣人であったポーランド人によるユダヤ人排斥。
スターリン主義とポーランド人への断罪。
共産主義体制の独裁化という歴史…

書いててもどんな生活で社会なのか言葉面しかわからない。

●そのうえ、主人公の少女・アンナ(イーダ)はカトリック修道院で修行中の修道尼。
今回の旅で、実は戦時下に家族を失ったユダヤ系としての出自を知るという設定。

ヨーロッパのキリスト教とユダヤ教。
ますますわからん。

ついでに言えば、映画史における”ポーランド派”の”新世代”という映画自体への惹句もある。
これも雰囲気しかわかってない。

世界史を紙の上で勉強してるだけの自分のような者には推し量れないものが描かれた映画なのでした。


●戦時のユダヤ人と言えば、昨年末に観た「ハンナ・アーレント」。
映画の中で、仲間たちがヨーロッパのユダヤ人が背負う歴史について、熱く語る場面がありました。
こちらは、心情や思想を背景に「ハンナ」の生きざまをテーマとする映画。
まさに言葉が重要でした。
言葉で語れないものもあることも伝わってきました。
(…自分自身としては、もっともっと映画的に語る映画が観たいと思いましたが)

●ヴァンダとアンナ(イーダ)の映画は、言葉少なに進みます。
ショッキングな映像で訴えるのでなく、叙情的な画面。
耳に残るのはコルトレーンのエロティックなジャズの調べ。
歴史ー状況を知った「アンナ」がほとんど選択肢のないなかで、どう生きていくのか、自分の人生を引き受けていくという物語

●叔母のヴァンダがむちゃくちゃ渋くてかっこいい。
ジーナ・ローランズを思い浮かべました。







●監督のインタビューがweb上にあったので、鑑賞後に読んでみると、
テーマへの切り口に別の考えもあったそうです。
なぜカトリック教会の修道女とユダヤ系女性の話なのか。
なぜ時代設定は、戦争と革命の間の時期なのか。
監督インタビューを読むと、選ばれたこのシーン設定の選択の妙を感じざるを得ませんでした。

これが新世代ってことか。