新国際劇場は、ほとんど通天閣の足元といえる距離。
昼前についたので、ジャンジャン横丁も商店街も人影はまばら。
観光客と従業員が同じくらい。仕出しや営業車もまだ多い。
しかし。
洋画・成人映画の看板のある角を曲がると、いかにも着ぶらりでやってきた近所ふうの高齢者が数人、一角に集まっている。
で、そこが、映画館の入り口だった。
とにかくトイレ入りたいので、さっさとお目当ての映画のチケットを1000円で購入する。
ちなみに洋画の3本立て。
1000円で3本見れるのか。
ロードショー期間を外した映画の3本立ても今では本当に珍しくなった。
お目当ては2番目の上映作品だが、1本目は「エリジウム」だ。
公開されたばかりだから、まだDVD化されてない。
先日、シネコンの大人料金で見てきたばかりだ。
壇蜜にそっくりな未亡人が描かれている成人映画の看板の下に設置されている券売機にお金を投入すると、ほとんど同時に隣の券売機でお兄さんが成人映画のチケットを購入した。
たしか、それも1000円。
押しボタンを押して自動ドアの入り口を通る。
入り口は一つしかない。
つまり成人映画も洋画も入り口は同じ。
押しボタン付きのちいさな自動ドア。
ドアの横にもぎりの(高齢の)お姉さんがいる。
すぐ目の前に上映ホール扉と地下に入る階段がある。
階段横に地下劇場と示してある。
どっち行ったらええんやろ?とお姉さんに聞いたら、洋画観るの?と確認された。
そういえばチケットには「大人1000円」しか印刷されていない。
うん、そう、と答えたら、目の間の扉、と指示される。
地下の階段は成人映画用ホールに向かう。
と、いうことは、どっちの1000円買おうが、どっちとも見られるのではないだろーか。
もぎりのお姉さんに怒られるだろうか。
そんなしょーもないことよりトイレ行きたい。
「男子洗面所」と書いた扉を押し開ける。
真っ暗な広い空間が見えた。
扉を開けた際の出入り口の光がさっと広い空間に流れ込み、映画のスクリーンに1本目の「エリジウム」のエンドロールが流れているのが目に入った。
ああ、上映ホールの中にトイレがあるのだなー。
ホールは、昔の規模ではかなり大型で、右端が男性・左側が女性のトイレである。
トイレから出て、そのまま着座し、「エリジウム」のタイトルロールを眺める。
観客はおじさんばっかりである。
きっと観客の平均年齢は60歳を越えていると思う。
冗談でなく、病院の待合室の老人会(男のみ)化と同じである。
成人映画と入り口が同じだから、よく考えたら当たり前か。
2階席もある。
これは、なつかしー。
スクリーンに自動カーテンが上映のたびに閉じたり開いたりする。
これも、なつかしー
左側の女性用トイレの前だけ桟敷になっている。
見上げると、天井は茶色く薄汚れている。
きっと煙草のヤニでも汚れた歴史があるんだろうなー。
映画を見るよりも2階席から1階席を眺めているだけのおじさんもいる。
1本目が終わっても帰る人は誰もいないように見える。
映画上映中も、ホールの途中入退出は頻繁。
いつも誰かが立ち上がるか歩いている。
おかげで僕も遠慮なく、途中トイレに立ちあがれた。
ホール内をウロウロ歩き回る人もいた。
後ろの通路をいったりきたりして。
ずっと席を探している感じの人もいた。
ひょっとしたらいつも自分の座る席に誰かが座っていたのかもしれないなーと、帰るときに思い至る。
映画途中、風呂に入るみたいに鼻歌をうたいながら入場して、真ん中の席に座る人がいる。
映画終盤には、「雨降ってきた、大雨や」と言いながら、席を探しに入ってくる人もいた。
もちろん、ちゃんと見てる人は見てる。
僕自身は、内容は興味あったので、全然気にせずにけっこう映画は堪能できた。
用事があったので、お目当てが終わるとすぐに退出した。
映画と映画の間に新聞読んだり、
煙草を吸いに出たり入ったりしながら、
おしゃべりは少ないけれども
数百円で一日中過ごせる
アミューズメントの施設。