2016年11月27日日曜日

(展)『ウィリアム・ホガース 描かれた道徳』

”描かれた道徳”とは何を言うのか?

 11月3日(2016年)に最終日となる伊丹市立美術館、ウィリアム・ホガース展に行ってきた。

伊丹市美術館自体がJR・阪急とアクセスもよく、城跡・町家・アイ・イオンモールとやたら、観光・文化の街になっているとは知らなかった。

美術館と工芸館と町家とそのお庭が楽しめる
お得感の高い駅近の施設だった。
おまけに、文化の日だったので入館無料。

天気が良かったので、時間と体力があったら
駅周辺の旧の町並みをぐるぐる散歩するところだが、ウィリアム・ボガース(以下WH)だけで、気づいたら3時間半も立ちっぱなしだった。

昼飯も抜きだが、版画だけでお腹いっぱいになってしまった。


WHは1700年代のイギリスのアーティストで、当時黎明期を迎えていた出版ジャーナリズムの売れっ子版画家。

物語の挿し絵としての版画もあったが、もっとも有名なものは連作となった作品群で、独自のストーリーを描き出している。


その描き出されたものには、清教徒革命後の議会政治の欺瞞であり、当時の社会風俗であり、それらが辿る歴史の姿であるので、鑑賞のしがいがあった。

ただ、版画を見ただけで、そこに描かれていることを読み解くのは非常に困難でもあることはよくわかった。

たとえば、片隅に描かれている二匹の犬が、当時の重要な道徳である
勤勉と怠惰というテーマを示しているとか、夫婦喧嘩をする夫と妻に扮しながら罪人を見せしめにする習俗とか、まったく解説なしでわかるわけはなかった。

登場人物のなにげない指が自分の胸のペンダントを示し、それはつまり清教徒をイメージを指しているのだ、という解釈も、解説なしで読みとけない。

だから、作品のおもしろさには解説がとても重要なのだが、今回の展示はひとつひとつとても丁寧に解説が付されていた。

展示作品のとなりに、もうひとつコピーを展示し、コピー作品には色づけで、注目ポイントの示してある。

むっちゃわかりやすい。
解説の力を感じた。
じっくりひとつひとつ読んでいたら、時間があっというまにすぎてしまい、途中から腰痛がかなりひどくなってきたという次第である。

『当世結婚事情』などの風俗を映し出した作品では、当時はやりの契約結婚の様子とか、賭事に落ちぶれた人間は獄につながれたり、田舎娘が娼婦として売り飛ばされたあげく、売春の罪で当局に逮捕されたり、あげく梅毒で亡くなったり、作品には上層から下層へと
めまぐるしく変転する人間模様も描かれており、見ごたえがあった。

ボガースの自画像でがは、ペットにパグを飼っているのもお茶目であった。
パグという犬種はこの時代にすでに成立してたんだ、犬好きの感想。