2015年12月2日水曜日

(展)影絵を作り出す実物装置の展示が、すごい世界だ。『光と影の芸術人 藤城清治』

海遊館の隣の、文化館。
なんて名前だったっけ?

『光と影の芸術人 藤城清治 展』に
いつだったか行ってきた。
(このブログ記事公開時点ではもう終わってます)

いつだったっけ?
学園祭で授業が休みのときだったと思う。

藤城…聞いたことのあるような名前。
多分、影絵とかの人じゃなかったけ?

いつものことで、よく調べていない。
なんとなくの記憶だけで展覧会へ。

かなり有名な人らしいことはわかった。
24時間テレビでも制作がドキュメントされた。
・・・というよりも、
作品を一目見たら、ああ見たことある・・・
と誰もが思うだろう。

日本の影絵の歴史みたいな人である。
現在、91歳になられるそうだが、
制作意欲はまだまだ旺盛らしい。

6メートルのキャンバスに鮮やかに描かれた
大阪を一望する巨大な影絵は、
去年あたりに創られたもので、
制作途中で脊椎圧迫で机に座れなくなり、
手術をしながら描き切ったそうだ。

脊柱の大病によって
見えてきた人生の喜びと希望についても
直筆メッセージが寄せられていた。
恐るべし。

藤城さんは、私たちのよく知るところでは、
ケロヨンの作者でもある。
そんなふうにいうよりも、
僕らぐらいの年齢の人からすると、

見たことある・・・で見てみると、
宮沢賢治の銀河鉄道などなどの話とか
セロ弾きのゴーシュとか、
松谷みよことか、
影絵で小人が出てくる映像…
と言ったら、すぐイメージされる「あの絵」
の人なのである。

…それはそうと、展示の方法がかなり豪華である。

少なくとも140点。
映像動画展示が数点あり、
独自の仕掛けがあるケース付き展示、
展覧会用の独特なモニュメントスペース
影絵の舞台裏装置の実物稼働展示。

専用の美術館みたいだ。

自分自身の好みの絵柄は、
1960年代に制作された西遊記の挿絵たちだった。

これはモノクロのみだった。
他の、独特な構図に幻想的な色使いが施され、
物語性を呼びかける美しい影絵たちとは
少し違うように思えた。

シャープなだけじゃなくて、
絵の登場人物の表情やキャラクターが明確で、
そして絵全体の動きがダイナミックに感じた。
アニメーションの1シーンを
切り抜いたようだった。

影絵は美しい。

2015年11月29日日曜日

(映画)その者、蒼き衣を纏いて・・・のハンガリー版  『ホワイト・ゴッド』

『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』

ここのところ、連日、3・4時間しか寝てられない。
そんな土曜にぽっかり空いた午後は、
ストレス解消の映画に限る。
途中で寝るかもしれないが、
家に帰る道筋がもうもめんどくさい。

そして、今回も聞いたこともない、
おかしな映画をチョイスしてしまう。

『ホワイト・ゴッド 犬と少女の狂詩曲』
ホワイト・ゴッドって何だ?

知ってて当たり前のことを
また、知らないのかもしれない。
なんか犬が復讐するらしい。


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主人公のリリは離婚した母と暮らしていたみたい。
お母さんが、豪州に数か月の留学が決まった。
リリはちょっと煙たいお父さんに預けられる。
そこから物語ははじまる。

お父さんの仕事は、見ていてちょっと興味を引いた。
日本でいうなら、屠場の衛生士のような仕事だ。

留学する元妻とは違って、
自分自身は大学の職ではなくなり、
食肉加工施設の一介の職員という点が
ちょっと気がひけている感じである。
しかし、そこには日本のような屠場自体への特殊な思いはない。

ところで、リリは、
いつもゴールデンリトリバーの雑種犬
ハーゲンと一緒だ。
いや、ボクサー犬が入っているのかな。

ま、とにかく、関係がぎくしゃくしているお父さんは、
犬と一緒はごめんだと言っている。

ハーゲンは寝室から追い出され、
浴室に閉じ込められてしまった。
吠え止まないハーゲンをかわいそうに思ったリリは、
トランペットの音を聞かせながら、
お父さんと二人きりの最初の晩を
ハーゲンと浴室で明かすことになった。

町ではその頃、雑種犬は税金を払うという
条例が定まっていた。
払わなければ、保護観察所に犬は移送される。
保護する、と言っても処分されるのはわかっている。
ハーゲンはアパートメントの住人に見とがめられ、
市の職員がお父さんに税金を払え、と言ってきた。

頭ごなしの職員を、お父さんは追い払ったが、
リリは心配で、ハーゲンを家に置いておけない。

学校のブラスバンドの練習にも連れて行ったが、
練習中にハーゲンが暴れてしまい、
一生懸命やっていたブラスバンドからも脱退を命じられる。
学校で一騒動を起こす悩み盛りのリリを
扱いきれないお父さんは、ハーゲンを棄ててしまうのでした。

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ここからは、ネタバレ注意…というか、
映画を見てみたい人は読んだらいけないことを書きます。

物語は、ここから二人の物語として進みます
一方は、リリの思春期の成長の物語、
お父さんとの絆の再生の物語として。
もう一方は、ハーゲンの犬残酷物語として。

まとめます。

最初、
少女の成長と家族の物語としてはじまり、
「ワンサ」くんや
「チャロ」の物語の要素も入りつつ
基本、『犬の心臓』のように進み、
『白い戦士ヤマト』をえぐくするとこうだな、とか、
『ベルカ吠えないのか』思い出したりしてるうちに、
「ロッキー」かい!と突っ込みも入れたくなります。
結局、「クジョ―」じゃん、「鳥」じゃんという思いになり、
仕事人か、「ダーティハリー」みたいな登場すんじゃねえよ、
とにやついてい突っ込んでいると、
娘のストーリーは、「レス・ザン・ゼロ」の世界さながらで、
しかし、この前見た「ザ・トライブ」ほどの荒れじゃないから、
父と娘の再生が進んで行って、
最後に、荒ぶる犬神さまたちを
「風の谷のナウシカ」のようにお迎えするようになるのです。

オフィシャルサイト記載の監督弁では、
ホワイト・ゴッドは思いついた言葉だそうで、
白人だけの・ためだけの、という意味も含めた「ホワイト」、
それに対して、万物への主を示す「ゴッド」という意味の二つで、
対比や矛盾の意図があったそうです。
説明聞くと余計よくわからんようになったけど。

次作は、
覚醒したリリ・人々を導く、
・・・としてほしいところです。

・・・こんなふうに書きましたが、
僕は好きです。

ちなみに犬好きの方は、
やはりあまり見ない方がいいと思います。
犬残酷物語はかわいそうです。

けど、もうひとつの感想も出てくるでしょう。
僕は映画の途中で、「役犬」たちに拍手を送りたくなりました。

映画のエンド・ロールでは、
ちゃんと登場した「役犬」たちもクレジットされていました。